仕切り直し新年会
年始から早々とインフルエンザで潰れたのは、私とたけと鈴木くんの3人だった。
鈴木くんは
「医療系の学校行ってるのに自分が情けない」
と小さくなって私にお土産をくれて大学のある東京に戻った。
どこまでも気の利く子だ。
「俺は風邪引かなかったぜ!」と威張り散らしたかずのアダ名は、先週ずっと「馬鹿」だった。
普通の暖かいお店で普通に新年会を仕切り直そう!とエリちゃんの休みの日に合わせて、かずとたけとゆみこちゃんエリちゃんが集まった。
もう1月中旬である。
やっぱり鍋食べたいかなー?と事務所から近い場所のうどんすき鍋がある店に予約を入れた。
南社長は一応誘ってやったのに私が言った「仕切り直し」が大変お気に召さなかったらしく、拗ねて来なかった。
寒中宴会の支払いが自分一人だったことも気に入らないらしい。奢りって言ったくせに!
「あはは、そんな地獄の新年会に行けなくてよかったです。」
エリちゃんは晴れやかに笑った。
本当大変だったんだから…。
そんな中でゆみこちゃんが「マコちゃんの保育園のクリスマスの劇に呼ばれた」とスマホの画像を見せてくれた。
マコちゃんが白いワンピースで背中に羽をつけてニッコリ笑っている。
完璧なベストショットだった。
マコちゃんいい笑顔だねぇ。今年は天使役だったんだ。
キリスト教系の保育園なので、毎年12月にイエス・キリストの生誕劇を公演する。
うちの子もここだったからこの劇出たよ、そこらへんに転がってる羊役だったけど…。
「羊…ラムか…」
「食う気かよ」
「いいじゃないですか、羊。私なんか道に生えてる木の役でしたよ。」
「うち、リンゴの妖精役だった。」
「不公平じゃありません?リンゴの妖精と木ですよ?」
まぁまぁいいじゃない。私ゃシンデレラのいじわる継母だったんだから。
「蜜柑ちゃんそのまんまやん…。」
「もうそこにしか役どころないっていうか」
「ノーコメントです」
まあそういう反応が返ってくるだろうとは思ってたけどさ。
あ、そういえばね。
これ貰ったんだけども。
私は封筒を出して置いた。某旅行会社の商品券、5万円分。
今月、エリちゃんとたけが誕生日って聞いて、4人で近場旅行にでも使って来ればいいかなって思って。
4人で使うとなんか足りないような気がすると思うんだけど。
ええっ!?とか、わっ!とか4人が反応した。
「旅行行きたいっ!」
「いつ?!」
「くれるの?いいんですか?」
「金券ショップに行こう!」
金券ショップ…。
「でもエリちゃん休みが合わないじゃん。」
「有給ぐらい取れるよ!」
ゆみこちゃんのスマホはすでに旅行検索に飛んでいる。
「でも蜜柑さんは?行かなくていいんですか?」
エリちゃんが恐る恐るな感じで聞く。
猫がいるから旅行はしないっ!
「猫命だからねー」
かずとたけがハモった。
ちょっと予算オーバーでしょ、なんで北海道とか検索してんの。
「雪まつり見れないかなぁって、えへへ」
もう宿とか手遅れじゃない?
「えー、どうせだったら暖かいとこ行こうよー」
「ハワイ?!」
たった5万で海外まで飛んだよ馬鹿じゃねーのこいつ。夢広がりすぎ。
「沖縄?!」
もう何もいうまい。
「俺外国行ったことない!」
「ていうか飛行機乗ったことない!」
たった旅行券5万で話ができる状態じゃなくなった。
喧々囂々どこいくどこいくと騒ぐので支払いだけして帰った。いいよね?