過去日記

汎用的涙脆さ

「蜜柑ちゃんちーっす。」

「いやー寒くなったねー。」

かずたけが冷たい空気を連れて事務所に入ってきた。

「うぉっ!何泣いてんの?」

「鬼の目にも涙?」

ずずっー。いきなり失礼な。

ネットの記事見てたら感極まっちゃってさー。ははは。

2人がディスプレイを代る代る覗きこむ。

「あぁー。この事件かー。懲役30年。」

「子供かわいそうだよね。」

「でも母親結構可愛かった。」

「可愛かったな!やったことは最低だけど。」

最低だ。

なんでこんなことになっちゃうんだろうねぇ…。

「また泣いた。」

「そんなに涙もろくて大丈夫なの?」

泣かないあんたらは人間じゃないわ!

「あ、酷い。母親に対する怒りのほうが強いかなぁ」

「子供はかわいそうって思うけど泣くほど感情移入してない。」

ふーん。でも私泣けるときは泣くことにしてるんだもんね。

「なにそれ。」

涙にはストレス物質が入って一緒に流れ出るんだって。

「ばかみてー。酷い話のほうがストレスになるんじゃないの。」

甘いな、いい話、感動話で泣くことだってあるもん。

「それもストレス物質すっきり出してリフレッシュ?」

「なんか蜜柑ちゃんのほうが酷い人な気がする。」

泣くの我慢するほうがストレスになるじゃないさー。

「子供の頃は必死で我慢してたね!」

「してたしてた。鼻の奥がツーンってしてきて。」

「決壊したら止められないんだけど。」

「すぐ泣いてたら馬鹿にされるしね!」

「今思えばなんであんなことで泣いたんだろうってこともあるけど…。」

「俺、小1んとき俺の植えた朝顔だけが芽を出さなくて泣いたね!」

「バカ過ぎる!」

朝顔かーそんなんあったね。

「朝顔の芽が出なくて世界の終わりだったもん。」

「ちいせえ世界だな。」

小1とかだったらそんなもんよね。

「蜜柑ちゃん、あれやったらいいじゃん!どっかの国でお葬式に泣く仕事!」

「そんなんあるんだ。」

「TVでやってた。」

泣き女だね。知らない人の葬式で泣けるもんか、って思うけど子供だったら無条件に泣けそうだなあ。

「蜜柑ちゃんストレス知らず!」

馬鹿な。

そう言えば昔、「それは秘密です!!」ってTV番組があったのよね。

「なんの秘密。」

小さかったからあんまり記憶にないんだけど、前半は「この職業の人は誰でしょう」みたいな感じで素人さんを3人くらい並べて、回答者がそれを当てるみたいな。

「バラエティなん?」

前半は。そこはまあ置いといて。

番組の終盤は、生き別れた兄弟を探したいとか、生き別れた我が子に会いたいとかの一般人が応募して、それをテレビ局が総力を上げて探しだして会わせるっていう。

あんまり覚えてないのだけど、当時はまだ戦後の混乱で生き別れた人とかもいたのかな?

で、ばーさんがそれ見て必ず泣いていたのよねぇ。

「泣き女の血筋なんだね…。」

そうなのかも…。

子供の頃はなんでばーさんが泣くのか解かんなくてさ。

情緒が全然発達してないから。

毎週必ず見て泣くから、「泣くんだったら見なきゃいいのに。」って思ってたのよね。

ばーさんもきっと泣きたかったんだろうなあ。

「ストレス発散のために。」

そう言っちゃ元も子もないが。

「きっと今その番組があったら蜜柑ちゃんが毎週見て泣いてるんじゃないの。」

いやーどうかなー。

やっぱり時代背景に戦争とか個人じゃどうにも出来ない問題があっての生き別れとかはドラマティックに演出出来るだろうけど、今の時代じゃねぇ。

「意外と黒い。」

「真っ黒だ。」

すみませんでした…。

 

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