理想の女性のタイプ
2012年初冬。
すっかり寒くなってきた。
社長から預かった請求書と領収書を届けるという名目でかずとたけがやってきた。
「秋から冬にかけての物悲しさって別格だよねー。」
と、たけが言った。
何、今日はポエマー?
「そう、ポエマー。人恋しくなっちゃうの。彼女作らなきゃ。」
紙粘土かなんかでちゃちゃっと作っとけよ。
「もうさ、エリちゃんでいいじゃん。」
かずが超カンタンにエリちゃんをおすすめした。
「そりゃ、ゆみこちゃんと仲良しだから4人で遊ぶとかはいいだろうけどさ。なんか違う、そうじゃない。」
もっともなことをたけは言った。
そうだよねぇ、まず好きかどうかって話が抜けてるし。
「エリちゃんが好きか嫌いかっていうと好きに決まってるじゃん。恋愛感情じゃないけど。だから、そういうのはエリちゃんに失礼だと思うし。」
「エリちゃんから迫ってきたらどうすんの?」
「そりゃあもう…」
たけはそう言いながらイヒヒヒと笑った。
結局そうなるのか。最低。
「蜜柑ちゃん、男なんてそんなもんよ?」
「俺だってエリちゃんに迫られたら行っちゃうかもだもん。」
「その後血の雨が降ると思うけど。」
「だから男なんてそんなもんなんだって。」
「目先の欲望にすべてが見えなくなってしまう生き物なの。」
納得。
「でも俺、付き合うなら絶対美人で性格よくて頭よくてなんでも許してくれて浮気しない人がいいなあ。」
自分を棚に上げて条件が厳しすぎじゃないの。
かずも「居るかよそんな女。いたとしてもお前の彼女にゃならねーよ。」と辛辣だ。
好みのタイプは?
「よしおかきよえちゃん。」
即答。
聞いたことある名前だけど誰だっけ…。
「いきものがかり。」
ああ!いきものがかりのボーカルさん。
なんか、思ってたのと違う…。
「好きなの、吉岡聖恵ちゃんが!あの人がタイプ、理想。歌声マジ天使!」
カラオケやにでもナンパに行けよ。
ちなみに
「蜜柑ちゃんが迫ってきたら?」
「ラスボスだな。必ず倒す。」
だそうだ。
100年早いわ。