眉毛ないし!
我が事務所の入り口で固まったDQN2人組。
「誰かと思った。」
「顔真っ赤じゃん」
「眉毛ないし」
「ちょっとホラーっぽい」
まじで言いたい放題だな。
ムカつくけど全部事実なのでぐぬぬと口の中で押し殺すしかない。
化粧品にかぶれました…。
「えー蜜柑ちゃんそんな繊細なお肌だったの。」
どういう意味だよ。
「もしかして、こないだエリちゃんに押し売りされたむっちむちになる高級化粧品?」
違います。エリちゃんが聞いたら怒るよ?
普通に使う分には問題ないのよね。
ファンデーション塗って日光にあたるとこうなることが度々…。
「暑いとこには絶対行かないんじゃなかったの?」
運動会だったんだよ…。町内の。
「行かなきゃいけない大人の事情か~。」
そういうこと。ということでしばらくホラーショーでよろしく。
「しばらく来ないことにしよう。」
「夢に見るしね。」
「蜜柑ちゃんが夢に出てくるとかもう駄目だろ。」
「それもう呪われてる。」
本当に言いたい放題だな、貴様ら。
「こんなときくらいしか反撃のチャンスないからね。」
やがて、顔の皮がボロボロ剥げてほとんど元通りくらいになったころ、2人組が訪れた。
「あ、顔治ってる。」
「社長が腫れ上がった顔の写メ取ってこいって言ってたのに。」
酷い。
「でもまだすっぴんなんだ。」
「ほんと眉毛ないよね」
しつこい。
「ヤンキー時代の名残で眉毛ないの?」
元々ないんだよ!薄毛家系なんだよ!女だけ。
夜にエリちゃんからメールが来た。
「いい眉毛用の美容液あります。元々まつ毛用なんですが。明後日公休なんで持ってお伺いしますね。」
何故、眉毛が薄いというトップシークレットが拡散されているんだ…。
さすがエリちゃん商魂逞しい。
「日本人て眉が濃いとはっきりした印象の顔になりますよね。私なんかも化粧落とすと『誰!?』って言われるレベルです。」
訪ねて来てくれたエリちゃんはフォローするようにそう言った。
ですよねー。
エリちゃんと一緒にやってきたゆみこちゃんはほとんど化粧していない。
「ちゃんとお化粧するときもありますけど、普通は日焼け止めにマスカラ、リップくらい。」
ごめん、私マスカラですらハードル高い。怖いんだよねあれ。
「美容液ちゃんと使えばまつ毛も眉毛も濃く長くなりますって!」
エリちゃんはまつ毛美容液なるものをどん!と机に置いた。
なるかなあ…。あ、これおいくら?
「あ、うちの商品じゃないんです。これは私が普通に通販で買ったものなんですよ。プレゼントします。」
えっ商魂じゃなかったんだ!
「ま、こうやって恩を売っておいていずれうちの商品をがっぽりとですね…」
エリちゃんは腹に一物ありそうな顔でニヤリと笑った。
えっ、怖いじゃん!
「嘘ですって、冗談ですよぉー。」
嘘にも冗談にも聞こえなかった…。