過去日記

車が欲しい!(そして預金)

唐突だけど、私は事務所を構えている。
なんのことはない便利屋稼業なのだが、自分の事務所で個人事業主の連絡先を請け負ったり、簡単な事務手続きを行ったりもしている。

以前、かずたけも毎日南社長の元で働いていたわけじゃなかったらしい。
手が足りないときに呼びつけ、仕事をお願いしていた。
一応文句は言いつつも彼らが呼ばれればきちんと来ていたのは別に親父さんたちが怖かったわけでもなんでもなく、その日仕事終わりに日給として現金支払いされるところにあった。
最初は5000円とかの低賃金だった。
ちょっと残業があったりすれば7000円にしたりした。
本当に立て込んで休日返上だったりすると1万円くらいになった。
彼らが要領悪くとも仕事を覚え始め、使えるようになるとその日の社長の気分で賃金は上乗せされたりした。
その賃金は社長の財布からその都度流れ出、適当な経理作業を行った結果、南社長の家には当然のごとくマルサの皆さんがおいでなさった。

追徴課税は相当辛かったようだ。

彼らは今、普通に月給制で働いている。
しかし、給料日前に金銭事情苦しくなると前借りに事務所にやってくる。
そしてDQN思考を撒き散らして帰る。

最初は常に不機嫌そうに口数少なくボソボソやってたが、最近はわりと普通の闊達な若者に近づきつつある。

「あー車欲しいー」

社長の軽トラでえーやん

「彼女出来たりしたら軽トラはないわー」

彼女、いつ出来るん? 可能性あるん?

「うっせーよ」
「俺の彼女になる人は今トキメイて待ってるはずなんやー」
「待ってる彼女を迎えに行くために車が必要ー」

妄想力、凄いね。

「ねーおばさん、車買ってー」

はったおすぞ。

「てか、おばさんの車貸して!」

ぜってーやだ。
パチンコにキャバやめて貯金しなさいよ

「それもなぁ~」

じゃないと無限ループでしょうが。

「あー宝くじ当たんないかなー」

もう一生やってろ。

 

財形貯蓄でもする?

「なにそれ?」

給料から強制的に徴収して毎月一定額の貯金をしていくの。

始めてから1年過ぎないと引き出せないけど毎月5万ずつ貯金できれば、1年経つと60万にはなるわよ?

「ほぉ~お」

「すげぇじゃん!」

あんたたち、貰ったらその金持ってキャバクラ行っちゃうからそうしたほうがいいんじゃないの?

「その金蜜柑ちゃんが勝手に使ったりしない?」

出来るか馬鹿!

「キャバクラ行くの1回辞めてさ…」

「でも、サーヤちゃんから給料日は絶対電話掛かって来るし…」

2人はボソボソと相談をしていたが、考えておくわと帰っていった。

 

その夜、10時過ぎ携帯に電話があった。

発信者はたけ、こんな時間に何だろうと思って出ると彼は言った。

「蜜柑ちゃん?俺ね、決めた。そのなんとか貯金ってのしたい。」

一瞬、何の事か解らなかったが、夕方話した財形貯蓄のことだとやっと思い出した。

「親父もそうしたほうがいいって言うし、1年頑張って働く気にもなるし車欲しいし。」

よし、解った!よく決断したね!契約書類の準備が出来たら連絡するから!

私はDQNな子がちょっと将来を考え始めたことがすごく嬉しかった。

なので、もう一人のDQNのことをすっかり忘れていた。

翌給料日、たけが財形貯蓄を始めたことを知ったかずが

「抜け駆け、最悪、裏切り者」

と叫び、彼らは3日間口を利かなかった。

(かずも翌月から財形貯蓄を始めた)

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