過去日記

2013年、寒中宴会

なんていうかな。

今2016年の8月なわけなんだけど、3年半前の真冬の出来事を書いてて色んな意味で絶望してきたよね。

今現在ひたすら暑いわけで。

どんなに寒かったか、なんて表現したくないし。ていうか出来ないし。

半年くらい経ったら読み返して加筆訂正するべきだな、うん。

 

 

2013年1月4日年始。

私は事務所を開けなかった。翌5日は土曜だったわけで、4日も休みにしようという次第。

それなのに、南社長は、4日に新年会なぞ計画しやがった。

案の定、人は集まらず、ゆみこちゃんやエリちゃんまで呼べとか言い出したけれど、

ゆみこちゃんはお父さんの実家に一家で帰省しており、留守。

エリちゃんは仕事が始まっていて、21時過ぎないと来られない、で無理。

我が家の妹は友人と京都に出かけて留守。姉は準夜勤。

そして、なんで4日当日にそれを言い出すのか、タイミングも計画性も何もない社長に苛立つ。

取り敢えず、指定された店まで行ってみると、間口の狭い店のさらに狭い急な階段を登らされ

ようやく3階まで着いてみたら細長い広い座敷の奥地に男5人が座りちっちゃく纏まって鍋をつついていた。

というか、5人全員で鍋を覗き込んでいるタイミングに出くわしたらしく、場違いなサバトかなんかを見てしまった気分になって、そのまま回れ右して帰ろうかと思った。

おまけに寒い。暖房とか全然効いてなくて冷え冷えとしている。

「お~蜜柑ちゃん、明けましておめでとう!」

かずに目ざとく発見され声を掛けられたので仕方なく靴を脱ぐ。

通り一遍の新年の挨拶の後、そこにいた知らない男性2人を見る。

こちらは?

どこかの同業他社の職人さんかな?

「一杯声かけたけど、中々来れる人いなくってさー。」

かずが言う。

「こっちが、△△病院跡継ぎの△△くん!」

ああ、あの…。

△△じゃあれだから仮に鈴木くん(仮)にしておく。

お噂はかねがね。

「どんな噂なんですかね?」

なるほど育ちの良さそうな子だ。朗らかな笑顔を見せた。

噂…。うーん破格の金持ちライフとか?

我ながら情けない受け答えをしてしまった。人に語彙力とか表現力とか言ってる場合じゃない。

「こっちが1回会ったことあるよね、川島!」

え?

「ほら、ミホちゃんが居なくなったときの…」

ああ、あの時の…。

会ったつっても暗闇過ぎて顔も見れてないよ。殆どはじめましてだわ。

そういうと川島くんは私を真似て

「お噂はかねがね」

と言って頭を下げた。

私も鈴木くんを真似て

どんな噂ですかね?

と問うてみた。

「人に見えるけど悪魔の一種とか…。」

かずとたけがバタバタと奇行に走った。

「おい!」

「ちょ、川島」

「和田アキ子とのタイマンで勝ったことがあるとか…。」

南社長が顔をそむけて肩を震わせている。

鈴木くん「そりゃすごいや!」とにこやかに笑っている。

和田アキ子…会ったことないし…。

「いや、ほんの冗談だから」

「ほんと、川島くんったら人が悪いわぁ~」

たけはおねぇのフリで切り抜けるつもりらしい。

「まあ、とにかく食おう、飲もう。ほら蜜柑にビールビール」

南社長がそう言って鈴木くんがグラスを渡してくれて、たけが瓶ビールを注いでくれる。

ねえ、めっちゃ寒くない?

全員が「寒い!」と答える。

「飲んで食えば温まるさ」社長に言われてそれもそうかと思って座り直す。

私、熱燗がいいなあ、お店の人こないよね、ここ。

「下までオーダー通しに行かなきゃみたいですね」

鈴木くんが言う。

それもめんどくさいなあ。

「僕、トイレ行くついでに注文してきますよ」

気が利く上にフットワーク軽い医学部お坊ちゃまとか…。出来過ぎで涙出そうだわ。

仮名、出木杉くんにすればよかった。

しかし、トイレも1階まで行かなきゃなのかぁ、ますますビールは避けたい。

南社長がせっせと入れてくれた鶏鍋を食べながらコート着ようか考える。そのくらい寒い。

やがて、鈴木くんが従業員を伴って帰ってきた。

従業員は熱燗の機械を抱えていて、鈴木くんはお盆に徳利とお猪口持っている。

鈴木くんすげー働く…。

あの、すごく寒いんですけど…。

と従業員に苦情をいうと、

「あっ、暖房入ってませんね!すみません」

と階段近くの何かのスイッチを押しに行き、窓側に衝立を2枚並べた。

「もう少しで暖かくなると思います、ご容赦下さい」

と丁寧に頭を下げて駆け足で階段を降りていった。

なんだか、お通夜のような新年会は続く。

「ほんと寒いねぇ。」

ドカジャンを脱がないままのたけは寒さに膨らんだ雀みたいになっている。

鍋は温かいけど、小鉢に取るとあっという間に冷める。

野外で食べてる気分だ。

たけ「俺も寒いから熱燗にしようかな」と機械から注いで飲み始める。

もう、酔っ払うしか他に方法はないな。

ただし、寝たら死にそうだ。

30分くらいして、川島くんが立ち上がって空調の送風口に向かって手を上げて風が冷たいことに気づく。

空調の電子パネルは送風だったらしく、暖房に切り替えたという。

多少酔ったような気がするのに暖かくならない。

宴会開始から1時間くらい経つ。

たけ「気分悪くなった。」と横になる。

普段、日本酒を飲まないから悪酔いしたんだと言われる。

鈴木くん「あれ?たけやん、熱出てない?」たけの額に触れる。

たけ「寒気する」と力なく答える。

全員が、まずいかも…という雰囲気を漂わせる。

鈴木くん「まだ親父起きてるし、たけやん連れて帰ります」と帰り支度を始める。

いい加減寒中宴会が嫌になってきてたかず「俺も一緒に」と言い出すが、「川島くんが困るでしょ」と阻止される。

一緒に逃げ出そうとしてたと思しき腰浮かせた川島くんが失意の元座り直す。

鍋のカセットコンロで暖を取る4人。社長が口を利かなくなる。

取り敢えず、この鍋の出汁で雑炊食べたいよね、とかずにご飯と玉子を貰いに行かせる。

(私大山の如く不動)

材料を運んできた従業員が、着込んでカセットコンロに当たる一行を見てぎょっとする。

異様な雰囲気に飲まれた従業員は材料を置いて逃げるように退散。

この時食べた雑炊は暖かくて本当に美味しかった。

 

帰宅して風呂に入ると寒さから開放された手足がじんわり痺れた。

携帯が光っていたので中を見るとかずからだった。

「たけ、インフルエンザだって!」

私は数年ぶりに日曜から寝込んだ。

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