過去日記

Crazy Rendezvous

心霊スポット突撃から数日後の夕方、制服姿のみほちゃんが事務所にやってきた。

「これお礼です」

差し出されたのは小さな紙袋。

中には小洒落た柄のビニール袋に包まれたクッキーと、青いチェック柄のビニールシートが入っていた。

あ、ありがとう。こんなことしなくてもよかったのに

「そう言われるとは思いましたけど、どうしてもお礼がしたくって」

とニコニコしている。 よかった、あの日のダメージはなさそうだ。

お茶でも入れるから座って

そう言っていると事務所の前に見慣れた軽トラがやってきて止まった。

来たよ、馬鹿どもが。

「私が連絡先聞いて…今日来るって言ったら、かずさんもたけさんも来てくれるって」

招集すんなよ、と思ったけど口には出さずにおいた。

「おお、みほちゃん!元気そうじゃん」

「本当に女子高生やー」

「心配させてすみません」

みほちゃんは、奴らにもクッキーの小袋を差し出していた。

お、おう… みたいな微妙なノリでクッキーを受け取る2人。

あぁこいつら見た目ほど、口で言うほど女慣れしてないなぁと情けなく思う。

「蜜柑ちゃん、回線貸してー」

なんだもう速度制限なのか、月半ばなのに。

「いや、まだやけど。時間の問題」

そういえば、かずのスマホあったの?

「川島(あの日の車の運転手)の車の中にあった」

「よかったよかった。俺の日頃の行いがええからねぇ」

私もビール一気飲みしてあんたら見捨ててよかったよ。無駄足踏まずにすんだ。

3人がああでもないこうでもないと動画サイトで探しているのは何かの曲らしい。

「あの日川島の車の中で聞いた曲が知りたくて」

川島とやらに聞けばいいんじゃないの?

「あれ親父の車で中身のCDも全部親父のなんだって。川島もよく知らないみたい」

「声でB'zってことは解るけど、相当前のじゃないかな、知らなくて」

「蜜柑ちゃん解る?」

乗ってもない車で掛かったCDなんか解るわけないだろう、エスパーか。

「まあそうだよね」

「えっと、”帰らせないよ朝がくるまでは”って歌詞」

あー、じゃあコレだ。

自分が操作してたPCで動画サイト検索して出してみた。

「おおーこれだああ」

「かっこいいですよね」

「これなんて読むの?」

「クレイジー?」

ランデブーだよ…

「俺英語苦手で…」

フランス語だし…

「なんで英語とフランス語がごっちゃなんだよ!」

稲葉さんに聞いて。

いやーしかし懐かしいなー。CD持ってた!私もこの曲大好きだった!テンション上がるよね!

「ばばあの青春の思い出とか、受ける」

うるせーよ

「発売1991年、俺ら生まれた年だ」

うわ、すごい衝撃

「誰かいなかったんですか?”帰らせないよ朝がくるまでは”っていう男は」

朝がくるまで飲んだくれてたからなぁ…拐えない拐えない。

「CDは生活苦に売り払ったとですか?」

友達に貸したら、「盗まれたごめんね」って…。

「それ、売られてますって。ははは」

いやーそれは無理じゃないかな。正規のケースから出して別のケースにCDだけ10枚くらい入れてて。

まあ10枚ともがっつり盗られてケースと歌詞カードだけ残ったわけだけど…。

「被害総額3万とかじゃね?ひでぇ」

「弁償してもらえなかったんですか?」

弁償して貰いたかったけど、そいつがその後すぐ覚せい剤の売人かなんかやって捕まったとかでもう行方知れずだなー

「蜜柑ちゃん、俺らのことすぐDQN、DQNって馬鹿にするけど自分も周りも相当だよね」

「類は友を呼ぶんだよね、やっぱり」

返す言葉もない。

みほちゃんは100mくらい引いた。

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